2012年5月26日土曜日

杉本博司という人

現代美術家、杉本博司。

彼のドキュメンタリー映画『はじまりの記憶』、
原美術館で開催されている『ハダカから被服まで』、
ギャラリー小柳での『Five Elements』を立て続けに見ました。

・・・

彼の名を知ったのは、無印良品の広告写真。
当時は写真家としてのイメージが色濃くて、
その凛然たるコンセプトと、ゆるぎない実直な2次元の世界観が、
素直に脳裏に入ってきていたものの、
なんとなく近寄りがたいような存在で、堅物な印象を勝手に抱いていました。


数年前、深澤直人氏の作品集の写真を彼が撮ったことをきっかけに、
ふたりの対談が青山ブックセンター本店で開催され、
その頃、東京住まいでなかったのにわざわざそのために上京したのは、
杉本博司という人の声やオーラを生で感じたいと思ったからでした。


現れた彼は、自信に満ちあふれた様子でもなく、
かといってほんわりとした優しい様子でもなく、
なんというか、至って普通。
特筆すべきは、その眼光の強さ。
大きいわけではないその目の奥あるものは、
カメラのレンズ以上にピントが世の事象に合うのだろうと思えました。

・・・


私は普段、映画(映像)を見るのがあまり得意ではないのだけれど、
『はじまりの記憶』が終演したときには、
感動の重さで、座席から立ち上がるのが勿体なく、
或いは、本当にもう少しだけ、その場で余韻に浸っていたかったのです。
というのも、劇中に使用されている音楽が、
これまた大好きな渋谷慶一郎さんだったからというのもあるのですが、
彼の音楽と杉本博司の世界観があいまって、
せつないのに、底辺に流れる情熱や意志の強さが、
視聴覚から見事に染み渡ってきて、
なんだかとっても気持ちよかったのです。
(ああ、DVDをやっぱり買ってしまおうかしら。)


この感覚を持ちながら、原美術館に行ったらなおのこと気持ちがいいに違いないと、
『ハダカから被服まで』を鑑賞。
正直、映画の衝撃があまりに強くて、
こちらはあまり集中できていなかったのだけれど、
銀塩写真にまとわりつく空気は、
どんな高画質なデジタル写真にも表現が困難であるのだと、素人目にも理解できました。

なんでしょう。
「クロ」でも「シロ」でも「グレー」でもない。
色ではなく、空気の粒子。


彼は、おそらく2次元の中に空気を編み込んでいく職人なんだと思うのです。



とにかく、名を知らずとも、
生きること、表現すること、自分らしさ、今の時代に生きること、プロであることなど、
どんな年代の方が見ても、考えることが山ほどあるよい映像と展示です。
ぜひにセットで。

日を改めて行ったギャラリー小柳での展示のことはまた今度。



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